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研究会メールマガジン第四号 (2025年11月29日)「感謝とワーク・エンゲイジメント」

[感謝とワーク・エンゲイジメント]
今年5月に当研究会のキックオフイベント「感謝の習慣がワーク・エンゲージメントを高める!」でお話させていただいた感謝の研究が、10月6日にBMC Psychologyという国際論文誌に採択され掲載されました。また同時に、プレスリリース致しましたので、ご報告させていただきます。
稲盛氏が「感謝はすべての根源である」と言っていたと、京セラの方から10年以上前にお聞きしていました。そして、これを科学的に証明して欲しいと言われ、認知神経科学的に証明することに取り組んできました。今回の研究では、働く人にとって重要なワーク・エンゲイジメント(仕事に積極的に向かい活力を得ている状態)が、感謝を2週間記録することで向上することを証明しました。
ワーク・エンゲイジメントは、オランダのユトレヒト大学のシャウフェリ教授らが提唱した概念であり、3つの側面(活力、熱意、没頭)からなり、それらが揃った状態だと定義しています。バーンアウト(燃え尽き)の対極の概念でもあります。そして、ワーク・エンゲイジメントを説明するモデルとしてJ D – Rモデル (仕事の要求度 – 資源モデル)をベッカー教授らが提唱し、「仕事の資源」(自律性、上司からの良いフィードバック、社会的な支援等)と「個人の資源」(自己効力感、楽観生、レジリエンス等)が、ワーク・エンゲイジメントを高めるとしています。そしてワーク・エンゲイジメントが高ければ、仕事上や健康上に良い結果があらわれるとしています(例えば、仕事のパフォーマンスの向上、離職率の低下、健康増進)。
ところで、なぜ感謝を記録することで、ワーク・エンゲイジメントが向上したのでしょうか。今回の研究では、感謝日記を書くグループと、日常の出来事日記を書くグループを作りました。そして日記の内容をテキスト分析したところ、感謝日記の中にだけ、上司、同僚、家族への感謝の言葉が出現しており、日常日記には全くこれらの記述がありませんでした。このことから、感謝することで、自分の持っている「仕事の資源」に気づき、それによりワーク・エンゲイジメントが向上した可能性が示されました。
これまでにワーク・エンゲイジメントを向上させるいろいろな取り組みが提唱されてきましたが、なかなかうまく行っていないのが現状です。感謝日記を2週間書いてみるといった、誰でも取り組めて、コストもあまりかからない方法が、これを解決してくれそうです。個人のワーク・エンゲイジメントが向上すると組織全体のワーク・エンゲイジメントが向上するという研究もあります。組織として、感謝日記2週間チャレンジに取り組んでみてはいかがでしょうか。
プレスリリースの記事はこちらになります。

https://www.nttdata-strategy.com/newsrelease/251006/

(文 山岸典子)

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